不器用オオカミとひみつの同居生活。
「なんだよ、このクソだせぇ服」
「……hello!」
「読み上げるな」
店にあったのは、灰色のスウェット。
それは無地じゃなかった。
前面に大きくプリントされたお鼻の大きなスノーマン。
そのスノーマンが両手を大きく広げて“hello!”と言っているのだ。
これを見つけたとき一人で笑ってしまった。
たぶん置き忘れたんじゃなくて置き去られたんだろう。
かわいそうだけど、さすがに納得してしまう自分もいた。
「後ろも見せてください」
舌打ちはされたけど、すなおに後ろを向いてくれた。
そこには色とりどり大小さまざまの星が散りばめられている。
「いいですね。似合ってますよ」
「嬉しくねーんだけど」
「そんなダサスウェットでもさまになってるってことです」
「やっぱ嬉しくねーわ」
観念したように濡れたままの髪の毛をぐしゃりとかき上げる。
絶対ちゃんと拭いてないな。
バスタオルを持ってきて、頭を拭くように念を押したあと私もお風呂に入りに行く。
彼とふつうに会話したことに気付いたのは、浴槽に浸かっているときだった。