不器用オオカミとひみつの同居生活。


「なんだよ、このクソだせぇ服」

「……hello!」

「読み上げるな」



店にあったのは、灰色のスウェット。


それは無地じゃなかった。

前面に大きくプリントされたお鼻の大きなスノーマン。


そのスノーマンが両手を大きく広げて“hello!”と言っているのだ。


これを見つけたとき一人で笑ってしまった。


たぶん置き忘れたんじゃなくて置き去られたんだろう。

かわいそうだけど、さすがに納得してしまう自分もいた。



「後ろも見せてください」


舌打ちはされたけど、すなおに後ろを向いてくれた。


そこには色とりどり大小さまざまの星が散りばめられている。



「いいですね。似合ってますよ」

「嬉しくねーんだけど」

「そんなダサスウェットでもさまになってるってことです」

「やっぱ嬉しくねーわ」


観念したように濡れたままの髪の毛をぐしゃりとかき上げる。

絶対ちゃんと拭いてないな。



バスタオルを持ってきて、頭を拭くように念を押したあと私もお風呂に入りに行く。


彼とふつうに会話したことに気付いたのは、浴槽に浸かっているときだった。


< 22 / 403 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop