不器用オオカミとひみつの同居生活。
おたがい腕を伸ばして相手の頬に触れている状態。
散々泣きはらしたから、きっと目も腫れてる。
恥ずかしさがこみ上げてきて、さきに手を離そうとしたけど。
それを上から押さえ込まれた。
「花平くん?」
「もう痛くねーの?」
その言葉にはいろんな意味が含まれているような気がした。
全く痛くないと言ったら嘘になる。
まだ当分は痛みも引きそうにない。
なんて答えようか困っていたら、ぐしゃぐしゃって頭を撫でられた。
ちょっと傷にひびいて痛かったけど、なんとか顔に出さないようにして。
「ありがとう」
笑った私に、ほんのすこしだけ。
本当にほんのすこーしだけ、花平くんは緩やかに口角をあげて
「わ、笑った……!」
「は?」
「戻っ……も、もう一回お願いします」
「ぜってーやだ」
めったに見られないその表情はもう引っ込んでしまったけど。
「バーカ」
花平くんの穏やかな眼差しは、いつまでも私の心を安心させた。