不器用オオカミとひみつの同居生活。


「……なにしてるんですか」


お風呂からあがれば、彼は部屋の中央に立ったままだった。


てっきりソファとかに座ってくつろいでると思ったから、余計に目の前の光景に違和感を感じた。



どこかに座ればいいのに。


この部屋は一人暮らし用だけどそこまで狭くはなかった。

だからソファも置いてるし、ベッドもちゃんと備え付けてある。


相変わらず立ちっぱなしの彼を横目に、部屋のコンセントにドライヤーをつないで髪を乾かす。




……昔、弟が猫を拾ってきたことがあった。


道ばたに捨てられていたらしいその猫は、三毛猫だった。



『ミケはちゃんと僕がお世話するから!ね、飼っていいでしょ?』


家に連れてきたときにはすでに名前が付けられていて。


お母さんとお父さんは二つ返事でミケを飼うことを承諾した。



そんなミケはうちに来てすぐの頃はずっと家の隅で固まってたっけ。


動くときと言ったら、ご飯とトイレのときくらい。


それ以外はずっと、じっと私たちを観察するかのように目を光らせていた。


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