不器用オオカミとひみつの同居生活。
忘れぬ記憶
雨夜と雷鳴
・
・
・
ひゅっと笛の鳴るような音が耳に届き、ゆっくりと目を開けた。
辺りはまだ暗く、外からは激しい雨の音がする。
ベッドの上で身を丸めるそいつは、小さな手で布団を握りしめていた。
『ちゃんとその布団で寝てくださいね!』
強気で釘をさしていた先ほどの姿からは想像できないほどに、目の前の女は小さくなっていた。
「茅森」
意味がないとわかっていても、反射的にその名を口にする。
ベッドの近くまで行き布団の上から手を置いた。
かすかな震えが伝わってくる。
「ふっ……ぅ、」
苦しげに放たれる声は、どこか縋っているようでもあった。
こうなるのは初めてではない。
茅森はほぼ毎晩、こうしてうなされている。