不器用オオカミとひみつの同居生活。
この喘息に気付いたのはこいつが風邪を引いたときだった。
ベッドの上で目を閉ざす茅森は、ひとりで苦しんでいた。
はじめは熱のせいかと思ったがどうやら違う。
暖房をつけるべきか。
リモコンのある場所に目を向けるが、すぐにその考えを打ち払った。
たしか、病人に暖房はいけないのではなかったか。
「おい、大丈夫か」
もちろん寝ているので反応はない。
かといって俺ではどうにもできず、放っておこうかとも思った。
それでも茅森の手を取ったのは、あまりにも苦しそうにしていたから。
気まぐれに手を握れば、弱々しく返ってくる。
何かを言っていたので、顔を近づけた。
いつもの茅森はもっとハキハキと
澄んだ声を出すが、
このときは、まるで糸のように
細くあどけなさを感じる声で。
たしかに茅森はこう言った。
『ここにいて……そばにいて、』