不器用オオカミとひみつの同居生活。







小さい頃から適当に扱われているのは、なんとなくわかっていた。



「憂、食べ終わったならはやく食器片して」


「……うん。わかった」


ごちそうさまをしようとしていた手で、食器を持つ。


隣では弟の陽向がゲーム機で遊んでいた。

まだクラスの誰も持っていないような最新型のゲーム機。


このとき、両親が株で成功していたことはもちろん知らない。


ただ急にお金持ちになったな、くらいにしか思ってなかった。



陽向の前にあるお皿は空で、私より前に食べ終わっていた。



「姉ちゃん、僕のも持ってってよ」

「陽向。たまには自分で、」

「いいじゃない。お姉ちゃんなんだから、持っていってあげなさい」



私は知っていた。


お父さんとお母さんが望んでいたのは、
“男の子”だったってことを。



『陽向って良い名前でしょう?ずっと前から考えてたのよ』


いつか陽向に話していたのを聞いたことがあった。


< 236 / 403 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop