不器用オオカミとひみつの同居生活。
*
小さい頃から適当に扱われているのは、なんとなくわかっていた。
「憂、食べ終わったならはやく食器片して」
「……うん。わかった」
ごちそうさまをしようとしていた手で、食器を持つ。
隣では弟の陽向がゲーム機で遊んでいた。
まだクラスの誰も持っていないような最新型のゲーム機。
このとき、両親が株で成功していたことはもちろん知らない。
ただ急にお金持ちになったな、くらいにしか思ってなかった。
陽向の前にあるお皿は空で、私より前に食べ終わっていた。
「姉ちゃん、僕のも持ってってよ」
「陽向。たまには自分で、」
「いいじゃない。お姉ちゃんなんだから、持っていってあげなさい」
私は知っていた。
お父さんとお母さんが望んでいたのは、
“男の子”だったってことを。
『陽向って良い名前でしょう?ずっと前から考えてたのよ』
いつか陽向に話していたのを聞いたことがあった。