不器用オオカミとひみつの同居生活。



その日、授業のテーマは“自分の名前の由来”だった。


当時9歳だった私は、名前の由来を知らなくて。



「せんせー!」


ペアを組んでいた子が声高らかに先生を呼んだ。



「どうしたの?」

「憂ちゃんが名前の由来わかんないだって!」


先生があきらかに目を泳がせた。


そのときの私は「なんで先生は困っているんだろう」って不思議に思った。


今なら先生の気持ちもわかる。


『憂』っていう字にあまりいい意味はないから。



でも私はなんとも思っていなくて。


むしろ自分の名前が好きだった。


陽向の名前をずっと前から考えていたように、

きっと私の名前も一生懸命考えてくれたに違いないから。


これからもずっと、自分の名前を大切にしていく。


そのつもりだった。


< 239 / 403 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop