不器用オオカミとひみつの同居生活。
その日、授業のテーマは“自分の名前の由来”だった。
当時9歳だった私は、名前の由来を知らなくて。
「せんせー!」
ペアを組んでいた子が声高らかに先生を呼んだ。
「どうしたの?」
「憂ちゃんが名前の由来わかんないだって!」
先生があきらかに目を泳がせた。
そのときの私は「なんで先生は困っているんだろう」って不思議に思った。
今なら先生の気持ちもわかる。
『憂』っていう字にあまりいい意味はないから。
でも私はなんとも思っていなくて。
むしろ自分の名前が好きだった。
陽向の名前をずっと前から考えていたように、
きっと私の名前も一生懸命考えてくれたに違いないから。
これからもずっと、自分の名前を大切にしていく。
そのつもりだった。