不器用オオカミとひみつの同居生活。
行き場をなくした手は一度、花平くんの背中に吸い寄せられるようにして……
たどり着くことなく、静かに降ろす。
私にそんな資格なんてない。
「私は善人のふりをして、行き場のない花平くんを利用した」
「違う」
「すべては自分のためだった、花平くんの気持ちなんて関係なかった」
「茅森」
「私のわがままに巻き込んでしまって、ごめんなさ────」
口を塞がれた。
唇を離そうとして抵抗したけど、キスは余計に深くなる。
私が何も言えないように、深く、長く。
手付かずのコーヒーはすでに冷めていたのに。
口の中は熱かった。