不器用オオカミとひみつの同居生活。
「奢ってくれてありがとう。見かけによらず優しいんだね」
「嫌みしか言えねーの?」
「嫌みなんて言ってるつもりないんだけどなぁ」
一定の間隔を保ち、ベンチに座る。
炭酸飲料のプルタブを引いた弟は、それを美味しそうに飲んでいた。
「やっぱりコーラは美味しいや。お兄さんもいる?」
「いい」
「もしかして潔癖?」
「だったらわりーかよ」
「ホントなんだ。潔癖の不良って、めずらしー」
不良と言うわりに、俺のことを怖がる様子は少しもない。
むしろ興味深そうにじろじろと見てくる。
「お兄さんって姉ちゃんの何?」
「言う必要があるか?」
「あるよ。僕と姉ちゃんは家族だからね」
「お前はあいつのことどう思ってんの」
「僕が先に聞いたんだけどなぁ」
いつからか雲行きが怪しくなっている。
雨が降り出しそうなのを懸念してか、弟は首を持ち上げため息を吐いた。
「別に嫌いじゃないよ。……お兄さん、どこまで知ってるの?うちの事情」
隣から探るような視線を感じる。
黙っているとまた同じようなため息が聞こえてきた。
「お兄さんて友達いないでしょ」