不器用オオカミとひみつの同居生活。
言わずとも何かを悟ったのだろう。
「可哀想だったとは思う。雑に扱われてさ。母さんたちにも、僕にも」
「他人事みてーな言い方だな」
「でもそれが普通だったんだよ。少なくとも、僕の中では当たり前のことだった。他の家のことなんて知らないけど、うちではそうだったから」
それが当たり前じゃないことくらい俺にでも分かる。
むしろ部外者であるからこそ、その異質さが手に取るように分かるのかもしれない。
こいつは茅森と同じ色の瞳を持っていた。
透き通ったガラス玉のような瞳は混じり気がなく、性格を表しているようでもある。
「……ああ、やっぱり姉弟だわ」
「どういうこと?」
ストンと何かが腑に落ちて、ひとりでに笑った。
怪訝そうな視線を横面に受け、シャットアウトするように再び空を見上げる。
もうすぐ降り出しそうだ。