不器用オオカミとひみつの同居生活。
「ねえほんと、絶対友達いないでしょ。お兄さん」
「あんたはよく喋るな。茅森と違って」
「僕も茅森だけどね。姉ちゃんが無口なだけ」
あいつが無口なら俺はそれ以下だ。
茅森はふつーに笑うし、すぐ赤くなる。
喜怒哀楽がはっきりしていて、見ていてわかりやすい。
投げられた空き缶が弧を描いて、ゴミ箱の中に吸い込まれていった。
「母さんたちが姉ちゃんのことどう思ってるかは知らない。聞いたこともないし。うちでは姉ちゃんの話タブーになっちゃったから。
……ただ、ゼリーは」
「なに?ゼリー?」
「ううん、なんでもないや。じゃあねお兄さん」
弟が去ったあと、持ちこたえていた雨が降り出した。
最初は弱く、だんだん雨脚を増していく。