不器用オオカミとひみつの同居生活。
今まで、自己紹介をすると珍奇なものをみる目を向けられた。
憂?可哀想。親はどんな気持ちでつけたんだろうね。
興味本位で名前の由来を何度も聞かれた。
響きが可愛いから?
憂の意味を知らなかったの?って。
そのたびに思い出すんだ。
響きが可愛いからでもない。
憂の意味を知らなかったわけでもない。
『憂鬱だって思ったからよ』
「呼ばれるたびに思い出すんです。お母さんの言葉が、みんなに向けられるあの目が、離れてくれないっ……」
忘れようとしても無理だった。
名前は生涯、私のそばにいる。
ずっとずっと『茅森憂』として生きていくしかないのだ。