不器用オオカミとひみつの同居生活。
「もう、やだ……っ」
こんな自分が嫌だ。
花平くんにきつく当たってしまう自分が、いつまでも引きずっている自分が。
変わりたいのに、あと一歩をいつも踏み出せない。
真夜中にけもの道を歩いている気分だった。
山頂から麓に降りたいのに、暗くて足元も悪くて。
これ以上どうやって進めばいいかわからない。
静寂を破ったのは、花平くんだった。
「週末、空いてる?」
その意図がつかめなかったけど、私はバイトのシフトを思い出す。
今週末は人手が足りているので、入っていなかった。
「……空いて、ますけど」
「じゃあ行くぞ、茅森の家」
その言葉に目を大きく開く。
まるで最初から決めていたように、花平くんは言ってのけた。
「は……な、なんでですか?私、もうあそこには行きたくな……っ」
腰を引き寄せられて、そのまま花平くんの胸のなかにおさまった。
息が止まるほど抱きしめられる。
「花平く……」
「俺を信じろ」