不器用オオカミとひみつの同居生活。
わけが分からないのに、その言葉がすうっと身体の中に浸透していく。
胸の中でこんがらがっていた糸をほどいてくれるようで、
「それに、俺はお前の名前好きだけど」
同じようなことを言ってくれた人は今までにもいた。
だけどそれが気を遣われていることは私にもわかっていた。
……でも、
目の前の花平くんは、嘘をついているようには見えなくて。
ぽろりとこぼれ落ちた涙を指ですくわれる。
「お前はひとりじゃない」
真夜中のけもの道。
しゃがみ込んでいた私を見つけてくれたのは花平くんだった。
かすかな月明かりだけなのに、何の迷いもなくしっかりとした足どりで。
「……うん」
私が迷わないように、転げ落ちてしまわないように。
花平くんはずっと私の手を引いてくれていた。