不器用オオカミとひみつの同居生活。
隣にいたのは
「…………ここ?」
日曜日。
となりでめずらしく面食らっている花平くんが見上げているのは、まるで海外のセレブ街にあるような豪邸だった。
なんて、自分の家なんだけど。
私も10年以上住んでいたのに、この外装にはいまだに慣れない。
アパートから電車を乗り継ぐこと8駅先。
高級住宅街のなかでもこの家は群を抜いている。
「えっと、はい。ここです」
「お嬢様なんだな」
「そんなんじゃ……成金ってやつですよ」
鍵は持っていないから
呼び鈴を押すしかない、けど。
伸ばした手がちいさく揺れていた。
連絡すらしてないのに、いきなり来て追い返されたりしないかな。
そんな思いで、胸を圧迫される。
「茅森」
「……ありがとう」
ふわりと包み込まれた右手。
いつもの冷たさはどこにもなくて、あたたかな手のひらが安心させてくれた。
ここまで来たんだ。
もう現実から目をそらしたくなかった。