不器用オオカミとひみつの同居生活。
庭を突き進んで玄関まで行くと、お母さんが待っていた。
遠目から分かるほどに目鼻立ちのキリッとした美しい顔。
最後に見たときと全然変わってなくて、あの頃に戻ったみたいだった。
「……憂」
「久しぶり、お母さん」
上手く笑える自信がなかったから、はじめから作り笑いはしなかった。
それでも声が震えないように深く息を吸えば、
人工的なローズの香りが胸に迫ってくる。
用意していた手土産を渡している間、お母さんはちらちらと花平くんを気にしていて。
あ……花平くんのこと紹介しなきゃ。
そこまで頭が回らなくて、説明しようと口を動かそうとしたとき。
先に動いたのは花平くんだった。
「花平です。……憂さんとは」
「もしかして、彼氏?」