不器用オオカミとひみつの同居生活。
お母さんは何も言わなかった。
困ったように顔を伏せて、目すら合わない。
「もう一度、私の名前の由来が聞きたい」
「……名前の由来は、話した通りよ」
「……そっか」
憂鬱というたった2文字が。
まるで心を蝕むようなその2文字が、頭の中を支配した。
どこかで、私は期待していたのかもしれない。
実はあのとき言ったことは嘘だったの、本当の由来は別にあるの、って。
そんな都合のいいこと、あるわけないのに。
どんどん穴が開いていくこの胸で、淡く抱いていた希望もはじめからなかったように消えた。
こらえていた涙が一粒だけ落ちて。
お母さんと花平くんも気付かないくらい、小さな雫が地面に吸い込まれていった。