不器用オオカミとひみつの同居生活。



「姉ちゃん来てたんだね。お兄さんも一緒だ」

「陽向」

「母さんの声、リビングまで聞こえてたよ」


お母さんの後ろから姿を見せた陽向は、小さく笑った。

目の前まで来た陽向の目線はいつのまにか私よりも高くなっていて。



「姉ちゃんは昔から身体が弱かったよね」

「……うん。陽向がゼリーを持ってきてくれたこと、よく覚えてる」


ゼリーにもたくさん種類があるのに、陽向が持ってきてくれるのはいつも同じもの。

それは私が1番好きなゼリーだった。




「僕が持ってったゼリー、あれ全部母さんたちが用意したんだよ」


「陽向……!」

お母さんの制止も何のそので陽向は続ける。


「姉ちゃんが風邪を引いたら、父さんが急いでゼリー買いに行って、母さんがその間に蒸しタオルとか氷枕とか用意してたんだよ」



想像がつかない光景を必死に思い浮かべる。


陽向にしているのは見たことがあったけど、私には無縁のことだと思っていた。


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