不器用オオカミとひみつの同居生活。
「これ言うなって言われてたんだけど、なんか話聞いてて気が変わっちゃった」
「……本当なの?お母さん」
「憂、ごめんね。ダメなお母さんで本当にごめんなさい……」
ゆるりとうなずいたその姿は、今までに見たことがないお母さんだった。
「……花平くん」
「また痛い目見るかもしんねーぞ」
「いい。今さら痛い目の一つや二つ、痛くもかゆくもありません」
私が何をしようとしているのか、花平くんにはわかっていたんだ。
それでも、最終的にはつないでいた手をぽんと頭の上に置いてくれて。
「行ってこいよ、お人好し」
その言葉にうなずいて花平くんから離れた私は、
「お母さん」
玄関に座りこむお母さんを優しく抱きしめた。
思っていたよりもずっと小さくて。
お母さんたちもこんなに変わっていたんだ。
私は一体、今まで何を見てきたんだろう。
……ううん、見てすらなかった。
「お母さん。私たち、もっと話そう?
些細なことでもいいから、もっと話し合おうよ」