不器用オオカミとひみつの同居生活。
「僕も思ったー。まさか姉ちゃんさぁ」
その瞬間、私は花平くんの手を取って玄関を飛び出した。
「またねっお母さん!陽向!お父さんにもよろしく言っておいてください!」
逃げるが勝ちだ。
一度後ろを振り返ると、お母さんも陽向も笑っていた。
私も笑顔で空いているほうの手をあげる。
「────また帰ってくるから!」
そして庭を突っ切って、門まで来たとき。
足元でみゃあと鳴き声がした。
……ミケ。
茅森家のサビ猫がそこにいた。
いつもなら近くにも来てくれなかったのに、今は手を伸ばしても逃げなくて。
はじめて触れたミケの頭はちいさくて、ふわふわで、愛おしい。
「っミケ、ありがとう。また来るからね、ばいばい!」
私たちを送り出すように、ミケはもう一度みゃあと鳴いたのだった。