不器用オオカミとひみつの同居生活。
「アウトかな?」
「セーフ」
「じゃあセーフですね」
バレてないということで。
駅までの道のりを2人で歩く。
「花平くん、ありがとう」
お礼を言いながら、顔を緩ませる。
正直ありがとうだけじゃ足りない。
ひと言だけで済ますのはさすがに怒られるかな、と思ったけど。
花平くんはわざわざ立ち止まってくれた。
そしてじっと顔をのぞき込まれ、ただひと言。
「……ほらな」
誰に対して言ったのだろう。
私じゃなくて、まるで他の誰かに向けた言葉のようだった。