不器用オオカミとひみつの同居生活。
高級住宅の白壁が夕陽をきらきらと照り返していた。
行きよりも明るく感じて、私はうーんと伸びをする。
「鍵、一個になっちゃいましたね。また作らなきゃ」
「いらねーよ」
「え、なんでですか?」
「一緒にいればいいだろ」
きゅん、と胸が音をたてた。
…………きゅん?
待って、いま私、
わたし……花平くんにときめいた?
でもそれっきりで、もう何も起こらなかった。
何だったんだろう今の。
「ま、やっぱ不便だから作ろーぜ」
「台無し……」
「あ?なんか文句ある?」
文句はないけれども。
やっぱり最後は花平くんらしいや。
「さてと、夕飯どうします?何か食べたいものありますか?」
「別に。お前の作るメシなら何でもいい」
「うーん……いま頭に浮かんだものを教えてください」
「ナシゴレン」
「なにそれ」
道に落ちるふたつの影は近すぎず、遠すぎず。
この数日間で色々なことがあったなぁって、ふと思い返してみた。
嬉しいときも、
くじけそうなときも、
幸せだなって思うときも。
いつだって隣にいてくれたのは、花平くんだった。