不器用オオカミとひみつの同居生活。
「うぅ~……」
情けない声を出して机に突っ伏す。
窓を開けているからかすこし肌寒くて、しゅんと鼻をすすった。
こんな気持ち、今までなったこともない。
もんもんするのに苦しくはなくて、答えの分からないクイズに直面しているようだった。
そのうち脱衣所のほうから音がして。
「茅森」
そうだ、こうして名前を呼ばれるだけでも心拍数が速くなる。
ぎゅっぎゅって心臓をにぎられているような。
もう一度鼻をすすると、ふと頭に何かが触れて。
「髪乾かさねーの。風邪引くぞ」
「んー」
呆れたようなため息が聞こえた。
足音が遠ざかっていって、ふたたび近づいてきたと思ったら、すぐにドライヤーの音にかき消される。
温風と、髪のあいだを流れる指が心地よかった。
自分でやるよりも幾分優しくて、毎日これなら髪もさらさらになるのにな。
そうなったら花平くん気付いてくれるかな。
……ほら、ほら!
気を抜けばまたこうして考えてしまう。