不器用オオカミとひみつの同居生活。
しばらくして、カチッとドライヤーのスイッチが切れる音がした。
そういえば花平くんお風呂長いな。
もしかして浴槽の中で寝てたりして……
ん?
ハッと我に返って、身を起こした。
机をはさんで目の前の椅子。
レモネードを飲んでいる花平くんと目が合った。
「よお、狸寝入り女」
「狸寝入り……」
してないのに、反論できない。
あなたのことを考えていて上の空でしたなんて、口が裂けても言えない。
それならいっそ裂けたほうがマシだ。
というか花平くんが飲んでいるのは私のレモネードでは?
「えっと。髪、ありがとうございます」
「別にいいけど。めずらしーな、お前がそのままでいんの」
花平くんが乾かしてくれた髪に手を通す。
いつもより指どおりが良く感じる。
花平くんがレモネードを置いて立ち上がった。
「え、花平くん?」
近くなる距離。
自然と速くなる心音。
とうとう花平くんが目の前に来て、そのまま視線が絡みあう。
「茅森」
「あ、ぅ……えっと、」
ぎゅっと今回は目を閉じる。