不器用オオカミとひみつの同居生活。
その体勢で待つこと数秒。
体感ではもっと長く感じたけど、終わりは突然おとずれた。
おでこにかかっていた前髪を、さらりと払われる。
「傷、治ってよかったな」
「……え」
き、傷?
ぱっと目を開けると、花平くんが私を見ていた。
正確には、私のおでこ。
「傷跡、残るとか言ってたろ」
たしかに言った。うん、言っていた。
でも刈谷先生のおかげで、なんとか傷跡は残らずに済んだんだけど……
え、そ、そのことを確認しただけだったの?
一気に顔が熱くなる。
私、いま何を待ってた?
目をつぶって、花平くんからのキ……
すさまじい恥ずかしさともどかしさに襲われ、
勢いに任せてふたたび机に突っ伏す。
「おい、すげー音したけど」
頭を撫でられる。
何を考えているのか、こんなときにかぎって優しい手つき。
思えばあの日からだった。
『一緒にいればいいだろ』
一度覚えた胸のときめきは収まることを知らない。
答えの分からないクイズは、じつは分からない“ふり”をしていたり……なんてことも。
「おかしい」
そんなつぶやきも最後のささやかな抵抗で。
クイズの解答権はもうそこまで迫っていた。
触れられる髪も、ぎゅうと締め付けられる胸も。
ひどく心地よくて……私はそっとボタンを押した。