不器用オオカミとひみつの同居生活。



とはいえ慣れとは怖いもので。


自覚してからも表面上は冷静を保てるようになっていた。


もともとの性格もあるんだろう、我ながらこの淡泊さを尊敬する。



そんなある日のこと。



「あ、秋の四辺形みっけ」


アパートのベランダは見晴らしが良く、

たまにこうして夜空をながめるのがひそかな楽しみ。


この日は空気も澄んでいて、お風呂上に入ったあとにもかかわらずひとり空を見上げていた。



「ええと、ペガスス座でしょ。で、あれが……アルタイル座だっけ」


星と星をつなぐように、指でなぞっていく。



そうこうしていると肩にふわりと何かがかけられて。


低くて落ち着いた声が、すうっと耳に入ってきた。



「アンドロメダ」


いつの間にいたのだろう、隣で同じように星を見上げる花平くん。


私よりも薄着だったから、ひとつを共有するかのように毛布をかける。

身長も違うからきっと不格好だけど、どうせ私たち以外に人もいない。




というかアルタイル座じゃなくて、アンドロメダ座だったんだ。



「星、好きなんですか?」

「別に」

「でも、名前……」

「これぐらい常識だろ」


ジョーシキ。

花平くんから常識を諭されるとは。


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