不器用オオカミとひみつの同居生活。
またしばらく映画の感想で盛り上がったあと、そのうち話題は文化祭のことになった。
「ほんっと時の流れって速いよねー。もう11月だよ?」
たしかに、と私もうなずく。
花平くんと出会ってもうすぐ1年だった。
最初のご飯はたしか鮭茶漬けで、花平くんに怒られないかビクビクしたっけ。
あんなことで怒るわけないのにな。
あの頃の私に「大丈夫だよ」って言ってあげたい。
ラズベリーのケーキを食べると、口の中いっぱいに甘みと酸味が広がる。
「文化祭は一緒に回ろうね」
「はあ?何言ってんの」
すうちゃんは信じられない、といった顔をした。
「花平と一緒に回りなさいよ。当たり前でしょ」
「え、花平くんと?」
「そうよ。せっかくのチャンスじゃん」
すうちゃんの言い分も正しいから、言葉に詰まる。
私はでも、と消え入りそうな声で呟いた。
「私、すうちゃんと一緒に回りたい……」
学校のイベントはこれまでもすうちゃんと参加してきた。
花平くんとは家でも顔を合わせているから、
文化祭は一番の親友であるすうちゃんと過ごしたかった。
「だめ?」
「だめ、じゃない……うっ、あんたってやつは」
心臓を押さえたすうちゃんは、チョコケーキにフォークを突き立て、最後の一口を頬張ったのだった。