不器用オオカミとひみつの同居生活。
「いった」
デジャヴを感じたのはその日の夕飯。
無性にアジの南蛮漬けが食べたくなって、作ったのはいいものの……
お酢が口の横にできた傷にしみる。
「ねえ、口痛くありません?」
花平くんの口の端にも同じような傷があった。
でも全然気にならないようで、南蛮漬けを口に運んでいた。
「いや、痛くねーけど」
そういえば、初めて来た日も同じようなことを言っていたような。
昨日の出来事を思いだして複雑な気持ちになった。
嬉しいのと、悲しいの。
真逆の感情がごちゃ混ぜになってる。
「はあ……なんであんなことするかなぁ」
「そっちが先に仕掛けてきたんだろ」
「いや、先にキ……し、仕掛けたのは花平くんのほうじゃないですか」
「は?」
「え?」
怒っているというか、呆れているっぽくて。
何かを探るようにじっと見つめてくる。
「本気言ってんのそれ」