不器用オオカミとひみつの同居生活。
役割決めのときにいなかった花平くん。
家に帰ってから白雪姫になったことを報告した。
「お前が主演?ウケる」
「この、人事だと思って……」
ちなみに花平くんは大道具係に割り振られたけど、この人に積極性があるとは思えない。
参加だけでもしてくれたらな、というクラスメイトの思いを今、精一杯伝えてみる。
「あー……まあ準備ぐらいなら手伝うけど」
言質取った。
血反吐を吐くまで働かせてやる。
なんて、自分が白雪姫役になったからって八つ当たり。
「で、もう1人の主演は?」
「周くんです」
言ったあとでしまった、と息を呑む。
と同時に学習しない自分を責め立てたくなった。
私のバカ、周くんの名前を出せば花平くんが不機嫌になることは身をもって知ったのに。
予想どおり、真正面でお箸がピタリと止まった。
内心ドキドキしていたけど平常心を装ってみそ汁を飲む。
ちらりと切れ長の目を向けられ、いっそう鼓動が速まったけど……
「あ、そ」
花平くんは興味なさげにそう呟いただけだった。