不器用オオカミとひみつの同居生活。






「茅森ちゃんスキップして!」

「してる!」

「嘘でしょ!それただの千鳥足だから!」


総監督……委員長の声が飛んでくる。



練習はかなりハードで、血反吐を吐くのは私のほうだった。


ミュージカルだから台詞と歌とダンスを覚えないといけなくて、一番苦労したのはダンス。


物語の都合上、激しいダンスはなくてゆったりしたものばかりだけど、指先まで気をつけないといけなくて大変だった。



とくに難しいのは、小人と白雪姫のダンスシーンと、一番最後にある王子さまとのワルツ。


スキップすら千鳥足と言われる運動音痴にこれはむごい。




全体練習が終わったあと、すうちゃんがお茶を差し入れてくれた。


「カヤ、お疲れさま!」

「グランピー……」

「役名で呼ぶなっ」


グランピーは怒りんぼの小人で、すうちゃんはなぜかグランピーに抜擢されたのだ。



「すう、どうせならもっと可愛い役がよかったー」

「白雪姫、代わろうか」


「いやよ。だって最後、加瀬沢とキスしないといけないじゃん」

「フリだけどね」

「すうへのちゅーはホントにしていいよ」



作中でダンスを踊っているとき、白雪姫がグランピーの頬にキスをする場面がある。


予行ではもちろん寸止めにしてきたけど、たった今許可が下ろされた。


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