不器用オオカミとひみつの同居生活。
「わ、わ」
1人での練習とは違い、腰にまわされた手が身体の軸を固めてくれる。
やっぱりリードしてくれる人がいるだけでこんなに違うんだ。
驚いていると、数時間ぶりの周くんがにこりと笑いかけてくれた。
「1人で練習なんて水くさいぞー。ここは俺がいないとできないじゃん」
ターンのとき、その髪にキラキラと粒が付いていることに気付いた。
周くんは水泳部。
それが今まで水の中にいたってことを表しているのは想像に容易かった。
練習終わりにわざわざ戻ってきてくれたんだ。
「毎回残ってたろ?なかなか来れなくてごめんな。これからは付き合えるからさ」
「そんな、悪いよ。周くんは部活もあるんでしょ?それに私は好きで残ってるんだし、平気だよ」
「でも好きでこの役、引き受けたわけじゃねーだろ?」
「それは、そうだけど……でも中途半端にだけはしたくないから」
そりゃあ選ばれたときはびっくりしたし、いまも不安を払拭できたわけではない。
でもやるからにはきちんとやり遂げたかった。