不器用オオカミとひみつの同居生活。


「ごめんね。私なんかが相手じゃ不本意だろうけど、せいいっぱい頑張るから」


机を端に寄せた教室の真ん中で、音楽に合わせて足を運ぶ。


次の場面では前に出ないといけなかったのに、後ろに身を引いてしまった。

あっ、間違え……




「茅森ちゃんらしーや」


ぐいっと腰を引き寄せられて、なんとか合わせることができた。


そのかわり近づきすぎた距離に、あの男湯事件を思いだしてすこし恥ずかしくなってしまう。

いやいや、今思いだしたら終わりだって……ダンスに集中しよう。



「不本意なんかじゃないよ。そんなの、思うわけねーじゃん」


重ねられた手に力が込められて、周くんの真剣な瞳からそれが本心だってことが伝わった。




「絶対成功させような。頑張ろう、茅森ちゃん」

「うんっ!」


< 296 / 403 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop