不器用オオカミとひみつの同居生活。
──────っくしゅん!
自分のくしゃみで目を覚ます日が来るなんて思わなかった。
「あ、鼻水が……」
「お前はさ、フツーの起き方はできねーわけ」
いつかと同じく、隣に花平くんが座っていた。
「私、生きてる……?」
「知らね」
生きている頃と何ら変わりない世界だったので、たぶん生きているんだろう。
視線をうごかして辺りを見回す。
またしても横になっているのは私で、衣装のままだった。
そうだ、私……文化祭中に階段から転げ落ちたんだ。
白いベッドに、白い服。
一歩間違えればこれが……ともう一つの未来を想像してしまい身ぶるいをした。
全身がむち打ちされたように痛むけど、起き上がれないほどじゃなかった。
ゆっくりと身を起こして花平くんを見る。
「……ねえ。その頭の包帯は、私の事故となにか関係してるんですか」
起きて真っ先に目にはいった、痛々しい花平くんの姿。
頭だけでなく腕や足首にも包帯が巻かれていて、私よりもずっと重傷に見えた。
最後に感じたぬくもりは、花平くんだったんだ。
私をかばって一緒に階段から落ちたんだ。