不器用オオカミとひみつの同居生活。
……が、おそらくノイローゼだったのだろう。
抱える酒と頭は深くなっていくばかりだった。
『あいつと同じように笑うな。その瞳で俺を見るな』
『どうしろってんだよ』
まだ中学生だった俺は初めて言い返した。
『美里を返せ。頼むから、美里を返してくれ。後は何も望まない。……いつ間違えた?一体いつ、道を間違えたんだ』
親父は壊れることはなかったが、かわりに仕事に打ち込むようになった。
そこに帰れば自分の大切な人を奪った存在がいるのだから、まあ当然だろう。
俺もそのうち、その場所に寄りつかなくなった。
特に思い入れがあるわけでもない、写真の一つも飾っていないただの箱に帰る理由はなかった。
『──────うちに来ますか?』
その日も帰らないつもりだった。
運命?そんな良いもんじゃない。
整った顔立ちはしていたが俺の好みでもなかった。
ついていったのは気分。
空腹だったこともあり、さらに、冷え性の俺にその日の寒波はキツかった。
いま思えば本能だったのかもしれない。
だから出ていくときもそれ以上の感情はなかった。