不器用オオカミとひみつの同居生活。
*
花平くんが私の前から姿を消した。
それももう2週間も前のこと。
誤解されたままなのは心苦しかったけど、いまさら解けるすべもない。
でも私に引き留める権利なんてなくて。
もちろん、出ていくのだって花平くんの自由だった。
……ポストに合鍵が入っていたときは、さすがにメッセージを送っちゃったけど。
『ちょっと、直接渡すとかないんですか』
もちろん無視。言うまでもなく既読スルーだった。
いや、ブロックされてないだけましなのかな。
喧嘩をしたわけでもない、すれ違いともまた違う。
帰ってきてほしい、なんて打ちかけたメッセージを全消しする。
「バカ。花平くんの……バカ」
ちいさなため息は気持ちを沈ませる。
わかっていても気を抜けば漏れてしまう。
気晴らしに作ったクッキーはやっぱり美味しいとは言えなくて。
エクレアなんてもっと酷かったのに。
「砂糖と塩、間違えたっけ」
サクサクと音だけは立派なクッキーはどれもしょっぱかった。