不器用オオカミとひみつの同居生活。








花平くんが私の前から姿を消した。

それももう2週間も前のこと。


誤解されたままなのは心苦しかったけど、いまさら解けるすべもない。


でも私に引き留める権利なんてなくて。

もちろん、出ていくのだって花平くんの自由だった。



……ポストに合鍵が入っていたときは、さすがにメッセージを送っちゃったけど。



『ちょっと、直接渡すとかないんですか』


もちろん無視。言うまでもなく既読スルーだった。

いや、ブロックされてないだけましなのかな。



喧嘩をしたわけでもない、すれ違いともまた違う。


帰ってきてほしい、なんて打ちかけたメッセージを全消しする。



「バカ。花平くんの……バカ」


ちいさなため息は気持ちを沈ませる。

わかっていても気を抜けば漏れてしまう。



気晴らしに作ったクッキーはやっぱり美味しいとは言えなくて。


エクレアなんてもっと酷かったのに。



「砂糖と塩、間違えたっけ」



サクサクと音だけは立派なクッキーはどれもしょっぱかった。


< 338 / 403 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop