不器用オオカミとひみつの同居生活。
「……もしかして」
「え!?いやいや、僕は奥さん一筋だからね。それに美里さんは院長にぞっこんだったし」
私も同じように宙を見上げる。
端から見たらきっとおかしな光景に違いなかった。
「素敵な方だったんですね」
そのとき、刈谷先生の胸ポケットに入っていた端末が鳴った。
「おっと、そろそろ戻らなきゃ。引き止めちゃってごめんね」
「いえ、こちらこそありがとうございました。お仕事頑張ってください」
ロビーまで送ると言われたけど、その気持ちだけ受け取って、先生とはカフェで別れた。
後ろ姿を見送り、帰ろうとしたとき。
────どんっ
「わっ」
振り返りざまに、誰かにぶつかってしまった。
相手の持っていた資料が床に散らばり、血の気が引く。
「ご、ごめんなさい!」