不器用オオカミとひみつの同居生活。
「いやこちらこそ、急いでいたもので」
その人は座り込んで資料を拾いだした。
私もあわてて手を伸ばしたけど、カルテのようなものも混ざっていたから一瞬動きが止まってしまう。
病院の関係者さんなのかな……?
なるべく見ないようにしながら、一枚一枚拾っていく。
「本当にすみませんでした」
ぺこぺこと頭を下げて、集め終わった紙を差し出す。
そのときに初めて相手の顔を見た。
上背のある男の人。
貫禄が人並み外れて感じられた。
「どうもありがとうございます。それでは」
資料を受け取った男の人は、頭を下げて立ち去ろうとしたけど。
私の足はその場に張り付いたように動かなかった。
その後ろ姿を目で追って……
「花平くんのお父さんですか」
考えるよりも先に、そんな言葉が口をついて出た。