不器用オオカミとひみつの同居生活。



連れてこられたのは、飲み屋街。

の、さらに奥まったところにある路地裏だった。


コンビニまで来た男だけじゃなく、どうやら仲間がいるみたいで。

目の前には10人近くの男たち。


暗くてよく見えなかったけど、好印象は感じられない風貌であることはたしか。



誘拐、人身売買。

不穏なワードが頭をよぎる。



「連れてきたぜ。このタヌキ顔であってるよな」

「誰がたぬき……」


すこしでも口を開けば、首のナイフがぐっと押し込まれる。


集団の中心にいた赤髪の男が、たしかめるように私に顔を近づけた。

そのまま噛んでやろうか。



「ああ。こいつであってる」


惜しくもすぐに顔を離したから未遂に終わったけど。


赤髪の男が放った次の言葉に、これは誘拐でも人身売買でもないことに気付く。



「お前、花平の女だろう」


と、同時にこの人たちの正体も知った。


いや、思い出したのほうが正しいのかな。


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