不器用オオカミとひみつの同居生活。
「ふん。お前みたいな女、嫌いじゃないぜ」
くいっと持ち上げられた顔を、まじまじ見つめられる。
品定めするようなその視線から逃れようとしても、掴まれた手に力を込められて。
「こうして見れば上玉だし、あいつが来るまで俺たちと遊んでおくか?」
「っ……」
そんなの死んでもごめんだ。
身をよじるけど、男の力に敵うはずもなく。
服に手をかけられたときだった。
「……早かったじゃねーか」
ピタリと止まった男の手。
この場にいた全員の視線が、一点に集中した。
私も目を向けた、その先には────
「気をつけろよ。そいつ噛むぞ」
人を猛獣みたいに、と心の中で言い返す。
噛むのはどっちだ、とも付け足す。
目が合う。
だけどすぐに外される。
それなのに私はほっとしていた。
助けに来てくれたから、とか怖かったから、とかそんな感情よりもずっと。
ただそこに彼がいることに安心した。
「……花平くん」