不器用オオカミとひみつの同居生活。
「おっと、それ以上近づくなよ。この女がどうなってもいいのか?」
そんな言葉に続いて、首にちくりと痛みを感じた。
注射のようでいてそれよりもずっといやな痛み。
ああ、ナイフの切っ先が食い込んでいるんだ、って客観的に分析してしまう。
それでも私がはからずも顔を歪めたのと、花平くんの足が止まったのはほぼ同時だった。
「お前は生ぬるいんだよ。なあ、花平ぁ!」
げらげらと不快な笑い声はどこまでも響いて、
同調するかのように路地に吹き込んできた風。
笑いは伝染するなんて言葉は、嘘だ。
いますぐにでも耳を塞ぎたかった。
「よーしお前ら、準備しろ」
そのうち笑うことにも飽きたのか、それぞれが手にした物を見てはっと息を呑む。
鉄パイプに、角材。なかには趣味の悪い釘バットまで。
どう考えても素手相手に持ち出すものじゃなかった。
……この人たちはどこまで卑怯なの。
たぶん、人質をとるのも初めてじゃない。
こっちゃんの手紙に記されていた『不良たち』は、きっとこの人たちだ。
あのとき、こっちゃんを危険にさらしたのも。
無抵抗の花平くんを一方的に痛めつけたのも、全部────