不器用オオカミとひみつの同居生活。
ぐっと唇をかみしめる。
もう、覚悟は決まっていた。
「絶対こんな人たちの言いなりにならないで。私は大丈夫だから」
大丈夫は魔法の言葉じゃない。
便利な言葉でも、私の身を守ってくれる言葉でもない。
知ってるよ、わかってる。
わかった上で、その言葉を口にしたんだから。
とつぜん声を出した私に、動揺の声が上がった。
もちろん私だって、首にあてられた存在を忘れたわけじゃない。
声を出したことで最悪の事態になっていたかもしれない。
そればかりはイチかバチかだったんだけど……
そんなことさえ、どうだってよかった。
もういちど空気をいっぱい吸い込む。
「信じてください、花平くん!」
お願い。
あとはもう祈ることしかできなかった。
非力な私にはそれくらいしかできない。
でも、守られてばかりはもういやだった。
その顔が、身体が。
傷だらけになるのを見るのは、もういやなんだよ。
ねえ……花平くんはいったい何と戦ってるの?
ずっと、その目には何が映っているの?