不器用オオカミとひみつの同居生活。
「っ花平くん!」
前のめりになりながらその懐に飛び込んだ。
よろけることなく抱きしめられる。
ふわりと包み込んでくれるその香りはひどく優しくて、久しぶりで、柔らかくて。
まるで戦場に咲く一輪の花だと思った。
なんて、こんな恥ずかしいことぜったい言えないけど。
「危ない橋渡ってんじゃねーよ」
「でも落ちなかった」
「渡りきってから言え」
それでも一瞬だけ、ほっと安心したように息をもらしてくれる。
危ない橋に乗っていたのは私だけじゃなかった。
最悪、一緒に落ちていたかもしれないのに。
……信じてくれてありがとう。