不器用オオカミとひみつの同居生活。
私たちが合流したことに相手は怯んだけど、すぐに立て直した。
「ちっ……いや、まだ俺たちのほうが優勢だ!」
すこしは冷静になったのか、はたまたやけになったのか。
一気にケリをつけんばかりに押し寄せてくる。
そして──────
死屍累々の中心に立っている彼は、手の甲で切れた口端から垂れる血をぬぐった。
「……人質なんかとらなくていい。いつでも来いよ、相手してやるから」
「だめです、もう来ないでください。二度と花平くんにちょっかいをかけないでください」
物陰に隠れていた私はひょこりと顔を出す。
死屍累々とは言ったけどみんな気を失っているだけ。
花平くんが、『生ぬるいのはどっちだよ』って不敵に笑ったときはちょっと心配したけど……
いきなり姿を現した私に、花平くんはぐっと眉根を寄せた。
「なんで戻ってきてんだよ」
「戻ってきたつもりはないんです。そこで腰抜けちゃって」
逃げろって言われて、最初はその通りにしようとした。
だけど私の足腰は言うことを聞いてくれなくて。
いても役に立たないどころか、足手まといになることはわかりきっていたからあわてて近くに身を潜めたのだ。
ごまかすように笑いながら顔を上げたとき、ちょうど花平くんの手が伸びてきた。