不器用オオカミとひみつの同居生活。
「は、そんなわけねーだろ」
冗談で言っているのかと思えば、すこしも揺らがない瞳が俺を見上げていた。
「俺は喧嘩もするし髪も染めてる。それでも、自分のことは考えてないとか……言えんの」
「それは本当に望んでいることなんでしょうか。花平くんが不良をやってるのは、自分のためなんですか?」
「ああ、そうだよ」
「私にはそうは思えなかった」
物怖じせずこうやってぶつかってくる茅森に。
鋭い視線を向けても、それよりも鋭く返されるだけだった。
「なに必死になってんだよ、バカじゃねーの」
「バカはそっちでしょ。このお人好しバカ」
「は?お人好しバカはお前だろ。飛んで火に入る夏の虫って言葉、知らねーわけ」
「はあ?どこに灼熱の炎があるんですか?どこ?なに?なにが災いなわけ?」
「いま目の前にあるだろうが」
そのひと言が着火剤だったらしい。
「~っ、大体ねぇ!これ以上不幸になるなとか、幸せになれとか!私にも花平くん自身にも超絶失礼なんですよ!」
今まで抑えていたであろう怒りを、茅森はとうとう爆発させた。
「いつ私が不幸だって言った!?私の気持ちを勝手に決めるなバカ!!」
今にも胸ぐらを掴まれそうな勢いで、おそらく地面に伏せている奴らの存在も忘れて。
まるで俺だけしか見えていないように、その目は真っ直ぐ突き刺さった。