不器用オオカミとひみつの同居生活。
エピローグ
冬の朝は好きだった。
どの季節のどの時間よりも空気が澄んでいるように感じられるから。
先に目を覚ましたのは私で、ぼーっとする頭で目の前の光景をながめる。
朝の光を浴びる濡羽色にさらりと手を通した。
「……ほらね、どんな調味料でも美味しいんだよ。私の思ったとおりだった」
やっぱり違和感は仕事してない。
花平くんで暖をとりたくなってしまうのは、私の性なんだと思う。
目の前で手をふりふり振って、ちゃんと寝てることを確認してから
「失礼します」
とあらたまって抱きついた。
まだ冬がはじまったばかりなのに、まるで春のようにぽかぽかしてて。
眠気がふわふわやってくる心地のいい空間。
ひだまりでまどろむミケの気持ちになっていたとき電話がかかってきて、なんだかデジャヴだなと思いながら通話ボタンを押した。
「はい、もしもし……あ、お母さん?」
ベッドに腰かけ、できるかぎり小声で話す。
お母さんはどうやらパートをはじめたらしくて、そのことを嬉しそうに報告してくれた。
まだ働きはじめたばっかりだけど、やっぱり自分で稼いだお金で生活していくのは楽しいわ、って。