不器用オオカミとひみつの同居生活。
でも、この前みたいに乱暴じゃなくて触れるだけの優しいキスだった。
離れていった花平くんの目をみて、私はあることに気づいてしまった。
てっきり電話の声がうるさくて、だと思ってたんだけど……
あのとき花平くんは、さきに仕掛けてきたのは私だと言った。
すうちゃんから電話がくる前、私は何をしていたっけ。
あの日も、今日とおなじように……
「────そういう、ことだったんですね」
やっと気づいたか、とでも言いたげな花平くんが口角を持ちあげる。
わかりにくいんですよ、と口パクで返した。
『憂?どうかした?』
お母さんの不思議そうな声に、まだ電話中だったことを思い出す。
「ううん、ひみつ」
そして、今度は私のほうからキスをした。
次は外さないように、ちゃんと。
“上出来”
べ、と舌を出す花平くん。
私はもっと、べーっと舌を出したのだった。