不器用オオカミとひみつの同居生活。
「そういえば花平くんが手ぶらなのは、何か理由があるんですか?」
「ない」
「持ち物はどこに?」
「あー……散らばってるわ」
……どこに?
今まであらゆる場所を転々としてきた花平くんは、そのたびに服や日用品などを置き忘れてきたんだとか。
「適当ですね」
「金はあるけど」
「……60円しか入ってませんが」
「はは」
手渡された財布の中身はほとんど空で、見なかったことにして返す。
花平くんが初めて見せた笑顔は形だけのものだった。