不器用オオカミとひみつの同居生活。
私のまさかはいつも当たってしまうらしい。
おそるおそる布団をめくると、花平くんの安らかな寝顔があった。
今までのしんどさがマシになっていたこともあり、出産後の妊婦のように「元気な男の子ですよ!」と声をかけられたような気持ちになる。
けど違う。
私は出産なんかしてないし、この人は私の子どもでもない。
ただの眠れる不良だ。
「花平くん、花平くん」
声をかけても全然起きなくて、何度か揺さぶるとやっと薄目を開けた。
そしてのんきに大きなあくびをひとつ。
「起きたのか茅森」
それは私の台詞でもあった。
なんでここにいるのか。
なぜ私のベッドで一緒に寝てるのか。
そう聞けば、こう返ってきた。
「お前、熱でぽかぽかしてっから」
「だからって普通ひっつきますか?」
「さみぃんだよこの部屋」
「暖房を付けたらいいのに」
ほら、と壁に付いてあるリモコンを指さしたあとではっととした。
もしかして花平くん、私の身体を気遣って暖房を付けないでいてくれたの?
空気が乾燥して、喉が悪化したときのことを考えてくれたのだろうか。