不器用オオカミとひみつの同居生活。


もう一度顔をのぞき込む。


今度はおそるおそる、顔にかかるその蜂蜜色の髪を手でよけた。


息はしているはずなのに触れても反応はない。



その顔には殴られたような痣があった。


隠れていた左目の近くは青紫に変色していて、口の端は切れている。



私はそれ以上、声をかけることはしなかった。


すっと立ち上がって背を向ける。

警察や救急車を呼ぶためでもなく、山川さんに助けを求めるわけでもない。



今日のバイトはこれで終わりだった。
もう上がることができる。



家に帰る支度をするために、私はさっさと店内に戻ったのだった。


< 6 / 403 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop