不器用オオカミとひみつの同居生活。
もう一度顔をのぞき込む。
今度はおそるおそる、顔にかかるその蜂蜜色の髪を手でよけた。
息はしているはずなのに触れても反応はない。
その顔には殴られたような痣があった。
隠れていた左目の近くは青紫に変色していて、口の端は切れている。
私はそれ以上、声をかけることはしなかった。
すっと立ち上がって背を向ける。
警察や救急車を呼ぶためでもなく、山川さんに助けを求めるわけでもない。
今日のバイトはこれで終わりだった。
もう上がることができる。
家に帰る支度をするために、私はさっさと店内に戻ったのだった。