不器用オオカミとひみつの同居生活。
「……ちょっとだけならいいよね」
だから花平くんに手を伸ばしたのは、ほんの出来心だった。
さらりとした髪の毛が手のひらをくすぐる。
前にも触ったことがあったけど、やっぱりさわり心地がよかった。
無心で撫でていたら、その手をぱしりと掴まれて。
「さっきから何してんの」
花平くんの目が細まる。
「起きてたんですか」
「寝てたよ」
「寝てたんですね」
「この手に起こされるまではな」
「わっ」
ぐいっと手を引かれて、そのまま胸の中に倒れ込んでしまう。
顔を上げると、すぐ近くに花平くんの顔があった。
何を考えているかわからないその双眼が私を捕らえる。
掴まれていた手首が解放されたのはほんの一瞬で、すぐに手を繋ぐように握り直された。